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今を輝く女性のインタビュー
安田 由佳子
和菓子教室「ももとせ」代表
39歳(取材当時)、東京都出身。学生時代よりケータリングの仕事に携わり、フードコーディネーターとして勤務した後、和菓子教室を主宰して講師を務める。
和菓子教室を主宰し、作り方のほか、和菓子にまつわる歴史や逸話なども教えていらっしゃる安田由佳子様。お話を伺うために教室を訪ねると、そこには使い込まれた道具がていねいにしまわれている心地よい空間が。料理を仕事にされた経緯や和菓子の魅力をたっぷり語っていただきました。
百年の想いを受け継いで
安田さんは「ももとせ」という和菓子教室を主宰されています。このお名前には、どのような思いがこめられているのですか?
安田:「ももとせ」は、「百年」と書きます。長い年月みんなに愛され、作り続けられてきた和菓子を「作るところから楽しみたい」という思いで始めた教室です。百年にはまだまだ遠く及びませんが、餡を煮るための銅鍋は、もう10年以上使っています。食器の収納棚は夫が作ってくれたものなんですよ。自宅が教室を兼ねているので、あまり物を置かないようにしているのですが、だからこそ置いてあるのは愛着のあるものが多いですね。
手を加えすぎないものが
心地よい
今日は草履を履いていらっしゃいますが、これは普段から?
安田:ええ。これは室内履き用の草履なんです。だいぶ履きつぶしていますが、楽なんですよ。今日、着ている着物は祖母が着ていたお古です。
普段お使いになるものは、どのようなものを選ばれているのですか?
安田:身の回りのものは、心地よいものがいいですね。服はコットンやリネンといった天然素材のものを着ますし、洗剤や化粧品もオーガニックのものを選んでいます。どんなものでも、自然に近いもの、あまり手を加えすぎないもののほうが自分には合っているかなという気がしています。
伸ばしたい力を考えて
たどりついた仕事
なぜお菓子や料理に関する仕事に就かれたのですか?
安田:昔から、おいしいものに出合うと自分でも作ってみたくなるんです。高校生のときに、近所のパン屋さんのメロンパンの作り方がどうしても知りたくて、アルバイト募集の貼り紙には「大学生以上」と書いてあったのに、店長さんに頼み込んでアルバイトをさせてもらったこともあって。思い立ったら行動する感じなんですよ。
仕事にかける時間って、1日の中でいちばん長いですよね。だから、仕事にするなら、自分の伸ばしたい能力を伸ばせる仕事にしようと思っていました。私の場合は料理のスキルを伸ばしたかったので、料理関係の仕事に就けたらいいなと。
海外に行ったことが
日本を見直すきっかけに
最初から和菓子に興味をお持ちだったのですか?
安田:いいえ、最初はフランス語を学んで洋菓子づくりを学ぼうと思っていて、大学の仲間とフランスに行ったこともあります。クロワッサン一つとっても、日本で食べるクロワッサンと、フランスにある普通のパン屋さんで買ったクロワッサンとでは、味が全く違うんです。水や空気、湿度といった要素が違うだけで、味にこれだけの違いが出るんだということは大きな発見でした。
最初は海外への憧れが大きかったのですが、実際に海外に行ってみると日本のことを改めて見つめ直すきっかけになり、「和」のことをもっときちんと知りたいという気持ちが強くなりました。
働き始めてからも
新しい挑戦を重ねて
これまでは具体的にどのようなお仕事をされていたのですか?
安田:お菓子よりも料理全般に興味が移っていったこともあり、学生時代からケータリングの仕事をしていました。大学卒業後はケータリングの仕事を続けながら夜間に専門学校に通い、調理器具などを扱っている会社にフードコーディネーターとして就職することに。その会社の調理器具を使った料理レシピを考えたり、料理のイベントを企画したりしていました。もっと幅広い仕事をしたいと思い、正社員から契約社員になってからは、ケータリングユニットの立ち上げ、週末の料理教室、和菓子教室など、新しいことに次々と挑戦していきました。
四季の美しさを表現する
和菓子に魅せられて
そのなかで和菓子教室のお仕事を中心にされたのはなぜですか?
安田:きっかけは茶道を学ぶ中で感動した和菓子にあります。自分で作るようになると、そのシンプルな素材を使って四季の美しさを幾通りもの形にする、和菓子の奥深さに魅せられました。お菓子の名前一つとってみても、日本の四季や文化と深くつながっているので、そういう文化的な背景も伝えていきたくて。私自身、和菓子にふれるようになって、移ろいゆく季節をこれまで以上に大切に思えるようになりました。
食べる人に寄り添う
思いやりを忘れずに
今日ご用意くださったのは、何という名前のお菓子ですか?
安田:「雁月(がんづき)」という東北地方の和菓子です。いろいろな説がありますが、月のように丸く蒸し上げた生地に黒ごまを散らし、それを鳥の雁(かり)に見立てて、「雁月」と名付けられたという話が伝えられています。本来ならばクルミを使うのですが、今日はピーカンナッツを上に置いてみました。白いお砂糖は使わずに、黒糖しか入っていないので、やさしい甘さに仕上がっています。ルイボスティーにも合うと思います。
食材選びにも気を遣われるんですね。
安田:そうですね。食べる人の体調や好みなどをよく考えて作ることができるのが、おうちで作るお菓子や料理の良いところだと思います。非日常を意味する「晴(ハレ)」と、日常を意味する「褻(ケ)」という考え方がありますが、外食は「晴」にあたり、特別な瞬間を楽しむための食事だと思うんです。一方で、「褻」にあたる家庭料理は体をつくり整えるための日々の食べ物で、思いやりがこもった料理だという気がします。
和菓子がつないだ縁で
海外の人々との交流も
海外の人に教える機会もあるのでしょうか?
安田:海外の皆さんの和菓子に対する関心は高いんですよ。これまでにフランスで日本茶と和菓子の魅力をお伝えするセミナーを開催したり、ロシアでも和菓子教室を開いたりするなど、海外でもさまざまな活動をさせていただいています。ポルトガルやヨルダンに呼んでいただいたこともありますね。国によっては、和菓子作りに必要な食材の入手が難しいこともあるのですが、そんななかでも海外の皆さんが熱心に和菓子作りに取り組んでくださる姿を見ると、毎回とても感動します。
和菓子教室をされていて楽しいと感じるのは、どのようなときですか?
安田:それぞれのお菓子を味わえる季節が巡ってきたことを喜びながら、一つひとつをていねいに仕上げていく作業はとても楽しいものです。ただ、私自身に関して言えば、作ったものをみんなで食べる時間が楽しいから、おいしいものを作りたいというのが本音かもしれません。ですから、和菓子教室では作ったお菓子をおいしくいただく時間も大切にしています。毎回、お菓子に合う飲みものをお出ししているのですが、緑茶や抹茶のほかに、紅茶やルイボスティーを出すこともあるんですよ。
一日の終わりに夫婦で
語り合うひとときを大切に
ルイボスティーは、和菓子教室のほかにはどんなときに飲みますか?
安田:カフェインが入っていないので、夕食後や寝る前のほっと一息つきたいときに飲むことが多いですね。飲みやすいですし、香りも気に入っています。プレミアムオーガニックルイボスティーは、ティーバッグタイプなので、細かい茶葉がこぼれることもなくて衛生的でいいですね。
ご夫婦で一緒にルイボスティーを飲むことはありますか?
安田:夜、夫と二人で、それぞれの仕事を終えてからルイボスティーを淹れて、その日にあった出来事などを話す時間は大切にしています。夫は仕事中にコーヒーをたくさん飲むので、夜はカフェインを控えてほしいという気持ちもあって、自然とルイボスティーを選ぶようになりました。私は「その日の仕事を全てやりきった!」というときの充実感が好きなので、そんなひとときに安心して口にできる飲みものがあるのはうれしいですね。
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