カカオで変わるチョコレートの奥深き世界

チョコレートやココアの魅力はホッとする甘さだけでなく、種類によって異なる香りや味わいを楽しむことができる点にもあります。
原材料のカカオの風味をより楽しめるように、甘さを控えた商品も増え、「甘い物はちょっと…」という人にも選ばれるようになってきました。
ところで、当たり前のように使っているこの「カカオ」という言葉。そもそもカカオとはどのようなものかご存じでしょうか。
この記事では、美味しいチョコやココアを選ぶときにも役立つ、カカオの基礎知識と生産地についてご紹介します。

【目次】

1. カカオの基礎知識

2. カカオの産地別の特徴

3. カカオで作られる食べ物や飲み物

4.カカオで変わるチョコレートの奥深き世界

カカオ

カカオの基礎知識

チョコレートやココアの原材料として知られるカカオ。ここでは意外に知られていないカカオの特徴や生産地についてお伝えします。

●カカオとは
・カカオの主な特徴
カカオはアオギリ科テオブロマ属の常緑小高木で、高温多湿な気候の地域で栽培される熱帯植物です。
カカオの学名は「テオブロマ・カカオ」と言います。
テオブロマは「神様の食べ物」という意味で、かつてカカオは王様や貴族といった一部の特権階級だけに許された貴重な食料でした。

チョコレートやココアの主原料となるのが、カカオの果実(カカオポッド)の中にある種子です。
この種子をカカオ豆と言い、実から取り出して加工することにより、カカオ本来の香りが生まれます。

・カカオ豆が出荷されるまでの工程
ラグビーボールのような形をしたカカオポッドを割ると、カカオパルプと呼ばれる果肉が出てきます。
カカオ豆は、白くてぬるぬるとした手触りのカカオパルプの中にあります。
発酵方法は複数ありますが、西アフリカではバナナの葉にカカオ豆を包んで発酵させます。
発酵期間はカカオ豆の種類によっても異なり、3日間から1週間程度です。発酵するとカカオ豆は濃い茶色に変化し、カカオ本来の香りになります。
これは、発酵過程で種子の中の渋味や酸味などが減少し、甘味や旨味が増すためです。
発酵が終わったカカオ豆は、天日干しにして乾燥させます。

●カカオの主な生産地と育つ条件
カカオの主な生産地は、西アフリカや東南アジア、中南米です。
カカオの木は、年間平均気温が27℃以上あり、高温多湿な地方で育ちます。
また、直射日光にさらされない半日陰がカカオの生育に適しています。
カカオの木が育ちやすい生産地は限定されていて、主に赤道の南北緯度20度以内にあることから、そのエリアは「カカオベルト」と呼ばれています。

カカオの産地別の特徴

カカオは産地によって香りや味わいが異なります。主な産地別にカカオの特徴をご紹介します。

●西アフリカ
・主な生産国
西アフリカで世界有数のカカオ生産国として知られるのが、ガーナやコートジボワールです。
カカオの生産量で世界1位に輝いているのはコートジボワールで、ガーナが2位です。
また、ナイジェリアのカカオ生産量も世界5位の多さで、上位5カ国中3カ国を西アフリカが占めています。

日本で使用されているカカオ豆の多くはガーナ産です。
農林水産省が発表している「農林水産物輸出入概況(2017年)」によると、カカオ豆の7割以上をガーナから輸入していることがわかります。
ガーナは国がカカオ産業を推進しているため、カカオの品質や収穫量が安定しているのが特徴です。

※参考:
外務省「カカオ豆の生産量の多い国」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/cacao.html

農林水産省「農林水産物輸出入概況 2018年(平成30年)」
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/houkoku_gaikyou.html

・栽培されている品種
西アフリカでは、フォラステロという品種のカカオが主に栽培されています。
フォラステロは成長が早く病害虫に強いなど、栽培しやすいことから、カカオの全生産量の8~9割以上を占める品種です。
豆の形は偏平型で、苦味が強いほか、酸味や渋味もあるのが特徴です。ココアパウダーやスパイスに似た香りがあります。

●中南米
・主な生産国
中南米は西アフリカに次いでカカオの生産量が多い地域です。
主な生産国としてブラジルやエクアドル、ベネズエラ、ペルー、コロンビア、メキシコ、ドミニカ共和国などが挙げられます。
中でも生産量が多いのは、世界第6位のブラジルです。
カカオ発祥の地でもある中南米では、個性あふれる味わいのカカオを楽しめます。

・栽培されている品種
中南米ではクリオロという品種のカカオが栽培されています。
クリオロは病害虫に弱く栽培が難しいため、最も希少な品種です。
豆は丸い形をしていて、苦味が少なく甘味のある味わいが特徴です。
クリオロ種は独特の香りを持っているため、香りや風味を加えるためのフレーバービーンズとして用いられます。

また中南米では、クリオロ種とフォラステロ種をかけ合わせてできた、トリニタリオと呼ばれる品種も栽培されています。
2つの品種の性質を併せ持つトリニタリオ種は、栽培しやすく、豆の質が良いのが特徴です。フルーツやハーブ、ナッツなど、さまざまな香りがあります。

●東南アジア
・主な生産国
東南アジアでは、主に製菓用のカカオが栽培されています。
代表的な生産国は、世界3位のカカオ生産量を誇るインドネシアです。
また、近年はフィリピンでもカカオ産業が成長しており、注目を集めています。

・栽培されている品種
東南アジアで主に栽培されているカカオの品種は、フォラステロです。
この地域で生産されるカカオは酸味の強さが特徴で、焦げる寸前までローストすることにより、香りが立ちます。

カカオで作られる食べ物や飲み物

カカオの代表的な加工品と言えば、チョコレートとココアでしょう。現代のように、身近な存在になるまでの歴史を振り返ってみましょう。

●チョコレート
カカオ豆を原料に、牛乳やバター、砂糖、香料などを加えてできるのがチョコレートです。
チョコレートは、メソアメリカ(メキシコ南部や中央アメリカを含む地域)で誕生したと言われています。
紀元前1500年~400年ごろに、メソアメリカで栄えたオルメカ人が、この地域で栽培されたカカオを最初に利用したと言われています。

ヨーロッパ人でカカオに初めて接したのは、イタリアのクリストファー・コロンブスで、15世紀のことです。
しかし、コロンブスはカカオに関心を示しませんでした。
16世紀になって、メキシコに遠征したスペインのフェルナンド・コルテス将軍が母国に持ち帰ったことをきっかけに、スペインで飲み物としてのチョコレートが親しまれるようになり、その後フランスやヨーロッパ諸国に広まりました。
1800年代に入って、食べるチョコレートが考案され、お菓子としてのチョコレートが発展していきます。
現在多く食べられているミルクチョコレートが初めて作られたのは、1876年です。
スイスの菓子職人ダニエル・ペーターによって、牛乳入りのチョコレートドリンクを乾燥させたものにココアバターを加える方法が発明されました。

●ココア
カカオペーストを圧搾し、カカオ豆の脂肪分であるカカオバターを除いて粉砕したものがココアです。
1828年にオランダでチョコレート工場を営んでいたコンラート・ヴァン・ホーテンによってココアを製造する工程が発明されました。
カカオ液からココアバターを抽出する圧搾機が開発されたことによって、お湯に溶けやすいなめらかなココアパウダーが誕生したのです。
さらにココアを製造する工程の副産物として、ココアバターの抽出にも成功しています。

カカオで変わるチョコレートの奥深き世界

カカオで変わるチョコレートの奥深き世界

チョコレートやココアの魅力の一つである風味は、原材料であるカカオ豆の影響が大きく、カカオについて知ることは自分好みの風味を探すことにもつながります。
これまで何気なく食べていたチョコレートも、生産地やカカオの種類を気にしてみると、新たな発見があるかもしれません。
スイートからビター、ブラックまでチョコレートの種類は豊富です。
今日のおやつはチョコにして、カカオの奥深き世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。